はじめに
木工を始めようとする初心者・初級者の方にとって、最初の壁は「どの材料を選べばいいのかわからない。」ということではないでしょうか。
世の中には大変多くの木材がありますが、たとえ入手が容易なものであっても、木工には不向きなものもあります。
さわらび爺は、個人的なこだわりを持って主に「広葉樹」を好んで使っています。
今回は、爺が工房で長年向き合ってきた樹種たちの特徴を、個人的主観を交えて解説していきます。
長く愛用できる作品を作るためには、まず「木を知ること」から始まります。
木工に適当・不適当な樹種は確かにあります。
「広葉樹」と一口に言っても本当に多くの樹種があります。
その中でも爺がよく使う樹種としては、「欅・ケヤキ」「楢・ナラ」「タモ、塩地シオジの類」「栗・クリ」「栃・トチ」「胡桃・クルミ」「楠・クス」「朴・ホオ」などです。
その他として「外国産の樹種」も使うこともあります。
「針葉樹」については、「杉・スギ」「檜・ヒノキ」「槙・マキ、草槙・クサマキの類」などで、「松材」は脂分が多いこともあり、ほとんど使いません。
その他として「合板など」があります。
事情があり無垢材での加工が困難な場合など、家具の裏板・引き出しの底板・治具を含め自家用物置棚等々に使います。
過去にはステレオのスピーカーボックスの注文で厚手の合板を使った経験があります。
以下、今回はそれぞれの樹種の特徴を個人的な思いで解説していきたいと思います。
広葉樹
まず、爺の工房で最も出番が多い「広葉樹」について深掘りしてみましょう。
針葉樹と比較すると、一般的に広葉樹は硬いものが多くそのぶんだけ扱いにはコツがいります。
広葉樹の特徴
1. 「動く」力強さ:加工前だけではなく、特に加工後に木が反ったり捻れたりすることを、私たちは「暴れる」と言います。広葉樹はこの力が非常に強く、乾燥や保管には細心の注意が必要です。
2. じっくり育つ:樹木の成長も、材料としての乾燥も、針葉樹とは比べものにならないほど時間がかかります。
3. 加工の難易度:硬いケヤキや木目の入り組んだナラを相手にすると、素直なスギやヒノキと比べて、鉋(かんな)がけ一つとっても雲泥の差があります。(※柔らかすぎる材も実は加工が難しかったりしますが、それはまた別の話……)
それでも爺が広葉樹にこだわる理由
加工が難しく、手間もかかる。それでも、なぜ爺は広葉樹に「コダワリ」を持ち続けているのか?
それは、広葉樹にしか出せない「素材の輝き」があるからです。
磨き上げるほどに深みを増す光沢、一つとして同じものがない複雑で美しい木目、そして何十年、何百年と使い続けられる堅牢さ。
苦労して鉋をかけた後に現れるその表情を見れば、それまでの苦労は一瞬で吹き飛んでしまいます。
「加工が難しいなら、素直な針葉樹でいいじゃないか」という声が聞こえてきそうですが、それでも爺が広葉樹を愛してやまないのには、二つの大きな理由があります。
一つ目は、「世代を超えて受け継がれる強さ」です。
広葉樹は密度が高く、非常に堅牢です。
針葉樹の家具は傷も味わいになりますが、広葉樹で組んだ家具や道具は、少々のことではびくともしません。
百年かけて育った木を、百年使える道具に変える。この「命のバトン」を繋ぐ感覚は、広葉樹ならではの醍醐味です。
二つ目は、「経年変化の美しさ」です。
作りたてがピークではなく、使い込むほどに馴染み、色が深まり、独特の光沢が生まれる。
この「育てる楽しみ」を知ってしまうと、もう広葉樹の世界からは、なかなか抜け出せなくなるのです。
綺麗に仕上がった広葉樹の「質感」に魅惑されているのだと思います。
保存版さわらび爺が教える「主要広葉樹」の個性
爺が普段から触れている樹種たちの、表向きの顔と「裏の顔(加工のクセ)」を解説します。
1. 欅(ケヤキ):木材の王様

ケヤキ
• 特徴:日本を代表する銘木。とにかく木目が力強く、美しい。
建築・家具・工芸品 何にでも使われる万能選手です。
• 爺の視点:見た目は最高ですが、反りや捻れが激しい「暴れん坊」で
もあります。
しっかり乾燥させた材を選ばないと、後で泣きを見ます。
それでも、完成した時の風格は他の追随を許しません。
2. 楢(ナラ):落ち着いた品格

ナラ
• 特徴:非常に重厚で硬い。
虎の毛皮のような「虎斑(とらふ)」という美しい銀色の紋様が現れる
ことがあります。
家具・内装材・フローリング・ウィスキー樽などの用途があります。
• 爺の視点:欧米でもオークとして愛される高級材。
道管が太いので、仕上げにオイルを塗った瞬間の「化け方」が素晴
らしい。
非常に硬いので、刃物をしっかり研いでおくのが鉄則です。
3. タモ・塩地(シオジ):実直な優等生

タモ
• 特徴:木目が真っ直ぐで美しく、粘り強い。
野球のバットにも使われる素材です。
• 爺の視点:変な癖が少なく、広葉樹の中では比較的素直。
家具の脚や構造材に使うと、その粘り強さが安心感に繋がります。
4. 栗(クリ):素朴で力強い

クリ
• 特徴:水に非常に強く、腐りにくい。
古くから家屋の土台や線路の枕木に使われてきました。
• 爺の視点:タンニンを多く含むため、経年でどんどん色が黒ずんで渋
みが増します。
田舎風のどっしりとした家具を作りたい時には、一番に候補へ挙が
る材です。
5. 胡桃(クルミ):初心者に最もおすすめ

クルミ
• 特徴:落ち着いた褐色。
広葉樹の中では比較的軽くて柔らかい。
• 爺の視点:加工性が非常に良く、鉋(かんな)もかかりやすい。
初心者の方が「初めての広葉樹」に挑戦するなら、私は迷わずクル
ミを勧めます。
手触りも優しく、飽きのこない樹種です。
6. 朴(ホオ):細工物の味方

ホオ
• 特徴:緑がかった独特の色味。
材質が均一で、刃物の通りが良い。
楠(クス)同様に彫刻などの彫り物に最適です。
• 爺の視点:まな板や刀の鞘(さや)に使われることで有名です。
大きな家具よりは、トレイや小箱、彫刻などに向いています。
木目が目立ちすぎないので、形そのものを際立たせたい作品に適
しています。
7. 栃(トチ):大径木の魅力一枚板の天板にも

トチ
• 特徴:大径木が入手可能。一般的な木材とは異なり辺材(白太を使
います)。
• 爺の視点:一枚板のテーブル天板や木製玩具などにも使われる材
料です。
加工は比較的容易です。
その他広葉樹
木工に用いられる広葉樹は、他にもたくさんあります。
爺もこれまで様々な樹種を試してきました。
ですが、嗜好や入手の難易度・乾燥方法・動き(狂い)・加工難易度等々を経験して、今では、ほとんど上記のものに落ち着いてきています。
今回紹介した広葉樹以外でも「樺・カバ」「栓・セン」「橅・ブナ」「樫・カシ」「楓・カエデ」「柿・カキ」「桐・キリ」etc.などが思い浮かびますが、今ではほとんど使っていません。
材木と作り手には「相性」があると感じます。
爺の同業者の友人は、爺とはまた違った樹種への想いを持っていました。
人それぞれに「好き嫌い」があるのは当然です。
あなたも自分にあった樹種を探してみませんか?
針葉樹
特に広葉樹を愛する私ですが、日本の風景に溶け込む針葉樹たちの実力も忘れてはなりません。
それぞれの個性を紹介しましょう。
一般的に木工で馴染み深いのは、むしろこちらの方かもしれません。
知人やご近所さんなどから材木をいただくこともあるのですが、ほとんどが「杉」などの針葉樹が多いのです。
また、お付き合いのある材木店・銘木店で建築用材木も扱っている関係もあり、たまにお値打ち価格で譲っていただくことがある位の頻度となります。
とはいえ、自家用の「治具」や「雛型・見本」にはじまり、納屋で使う「棚の材料」から注文家具の「建具」・「裏板」・「引き出し底材」等々と、こうやって書き出してみると、量的にはソコソコ使っていることになるものですね。
代表的な針葉樹と特徴
針葉樹には、広葉樹にはない独自の性質があります。
1. 「素直」な性質
ケヤキやナラといった気難しい広葉樹に比べると、スギやヒノキは非常に「素直」です。木目が真っ直ぐ通り、鉋(かんな)がけ一つとっても、スッと刃が通る心地よさがあります。
2. 「成長」と「乾燥」の早さ
樹木としての成長が早く、材料として使うための乾燥期間も、広葉樹とは比べものにならないほど短くて済みます。この「回転の良さ」が、建築材などで重宝される理由です。
3. 「軽さ」と「柔らかさ」
全体的に密度が低く、軽くて加工が容易です。しかしその反面、爪を立てれば跡がつくほど柔らかいものも多く、重厚な家具作りには工夫が必要です。
保存版さわらび爺が教える「主要針葉樹」の個性
ここでは爺が普段から触れている針葉樹たちの、表向きの顔と「裏の顔(加工のクセ)」を広葉樹の例に倣い解説します。
1. 杉(スギ):真っ直ぐで繊細な優等生

スギ
• 特徴:日本中に植林されており、最も入手しやすい材。
真っ直ぐに育つ性質から「直立」のイメージ通り、木目も素直です。 柔らかく、調湿作用に優れています。
• 爺の視点:柔らかすぎて、かえって加工時に刃物がきれいに当たらず難易度が高かったり、少しぶつけただけで傷がついたりと、繊細な一面もあります。 最近は出荷が低調で良い値段が付かないと聞きますが、天井材から割り箸まで、もっと評価されて良い、日本が誇るべき樹種だと思います。
2. 檜(ヒノキ):気品あふれる香りの王様

ヒノキ
• 特徴:特有の芳香と、気品ある木目の美しさが最大の特徴。
湿気に強くカビが発生しにくいため、耐久性と強度を兼ね備えた高
級材として知られます。
• 爺の視点:高級建築材の代名詞ですね。
お風呂の桶やまな板など、水回りでの信頼感は抜群です。
加工している最中、工房いっぱいに広がるヒノキの香りは、木工家
にとって最高の癒やしと言えるでしょう。
3. 槙(マキ)・草槙(クサマキ):工房の歴史を支える影の主役

クサマキ
• 特徴:湿気や害虫(シロアリなど)に非常に強く、古くから建築材として
重宝されてきました。別名「アスナロ」や「アテ」とも呼ばれ、生垣や
庭木としても人気があります。
• 爺の視点:私にとっては非常に思い入れのある材です。
大昔、工房を立ち上げた際に馴染みの銘木店から格安で譲ってい
ただき、夢中で色んなものを作りました。
今使っている作業台の構造材もこれです。
今でも工房のどこかに、あの頃の端材が眠っているはず……と思う
と、なんだか感慨深いですね。
4. 米松(ベイマツ):タフな構造のスペシャリスト

米マツ
• 特徴:別名「ダグラスファー」。輸入材です。
強度が非常に高く、主に建築の構造材やログハウスの材料として世
界中で利用されています。
• 爺の視点:木工用として使う際、一番の強敵は「樹脂(ヤニ)」です。
ヤニが噴き出してきて困った経験が何度かあります。
強度は魅力的なのですが、家具などの細かい造作に使う際は、そ
の性質をよく理解しておく必要がありますね。
なぜ爺は針葉樹を「あまり使わない」のか?
• 「松材」の脂(ヤニ)問題
特に松などの針葉樹は「脂分」が非常に多いのが難点です。
加工中に刃物がベタついたり、仕上げの塗装がうまく乗らなかったりと、私の目指す作品作りにおいては扱いが難しい側面があります。
• 「暴れ」のパワーバランス
広葉樹は動く力が強い分、しっかり手なずけた時の安定感は抜群です。
一方、針葉樹は素直すぎて、経年変化による「深み」や「風格」という点では、どうしても広葉樹に一歩譲ると感じています。
その他針葉樹
針葉樹の中にも木工用材として適しているものは多くあると思います。
DIYショップなどで手軽に入手できるものとして「松材・マツ」材、「栂材・ツガ」材etc.があります。
製品として製材された規格寸法で販売されています。
購入の際には、選択できるのであれば、出来るだけ「捻れ」や「曲がり」の無いものを選びましょう。
そのようなクセは加工が済んでも同様に現れる可能性が高いからです。
さて、ここまで書いていて思い出しましたが「一位・イチイ 」 という樹種があります。

イチイ
赤い実は食べることもできます。(実際は甘い汁を吸うことができるということですね。)
岐阜県飛騨地方では、「イチイの一刀彫り」という名称で民芸品・工芸品も多く販売されています。
心材は濃い赤褐色で辺材は白く、その対比を活かした「看板」や「お品書き」もよく見かけます。
経年変化で、なんとも言えない「飴色」になることも特色の一つです。
高級材ですが、もし入手できたら作品の一部に「アクセント」として使うことも考えていいと思われます。
爺は、二十年以上前に神主さんが使う「笏(シャク)」というものを一度に100以上注文があり、知り合いの神主さんに現物の寸法・形・面の取り方などを確認のため、お借りした思い出があります。
大量の「一位・イチイ 」を一度に加工した貴重な経験ですね。
比較まとめ:広葉樹 vs 針葉樹
さわらび爺の経験から、初心者の方がイメージしやすいよう両者の違いを比較表にしました。

合板など

合板・ランバーコア
木工で使う「合板」は「ラワン材」や「シナベニヤ」製のものが一般的です。
特に「クロスバンド(直交ベニヤ)」と呼ばれるものは、皆さんが「合板」とか「ベニヤ板」と聞いた時にイメージするものになります。
もう一つ挙げるとすれば「ランバーコア」と呼ばれるものがあります。
おそらく木工で使うのは、この2種類で用が足りると考えます。
他にもパーティクルボードやファイバーボードと呼ばれるものが有りますが、興味のある方は調べてみられるとよいでしょう。
「合板」の普及品は、3㎜〜30㎜程度の厚みが一般的です。
幅×長さに関しては、910㎜×1.820㎜ (3尺×6尺からサブロク合板と呼んだりします)と1.210㎜×2.420㎜(4尺×8尺からヨンパチ合板と呼んだりします)の2種類が一般的な規格寸法になっています。
ただし、実際の流通量は910㎜×1.820㎜ (3尺×6尺:サブロク合板)が圧倒的に多くなっています。
爺の場合「合板」についてはかなり使途が限定的になっています。
針葉樹の項目と重複するのですが、「治具」や「雛型・見本」はまず「合板」を使います。
薄くても比較的狂いの少ないことから注文家具では「裏板」・「引き出し材」に使うこともあります。
そのほかでは、過去の仕事を思い出してみると「ランバーコア」を使い新築された蔵の「棚」を作ったこと、同様にオーディオの「スピーカーBOX」を作ったこともありました。
古材・廃材など

古材・廃材
爺のような仕事をしていると、処分に困った材木を「使いませんか?」と声を掛けていただく機会もあります。
無垢材は本当に素晴らしいと感じる機会のひとつです。
時代を経た古材であっても、ひと鉋かけるだけで、新品のように生まれ変わります。
木工を趣味や実益とされる方々は、ぜひ、普段から周りの人に声をかけておくべきだと思います。
運が良ければ「お宝のような良材」を入手することもあるからです。
古材・廃材でなければ出せない「味わい」もありますし、「リサイクル」「リユース」にも役立ちます。
木工は今の時代に本当に合っているのかもしれませんね。
外国産の樹種

カリン
家具製作ではありませんが、もう30年以上前には「脇床一式」:(床板・天袋板・地袋板・違棚・筆返しなどの加工)の仕事で国産欅以外の、「花梨材」などの外国産樹種の加工をしたものでした。
特に近年では国産の大径木が極端に少なくなってきていて、一枚板でのテーブル天板用板など、海外産の材木を見かけます。
「花梨」などは資源保護の観点から輸入できなくなっているようです。
「ブビンガ」や「アサメラ」など明らかに「和名」では無い樹種も木材市場や材木店で見たりします。
昔から馴染みのある外国産樹種では「ローズウッド」「マホガニー」「ウォールナット」「メープル」等々も高級家具材として現在も流通しています。
これらも木工材料として選択肢の一つではありますね。
まとめ
材料選びは、作品の「魂」を決める作業です。
最初はホームセンターのSPF材(針葉樹)から始めても良いでしょう。
しかし、少しずつ慣れてきたら、ぜひ広葉樹の無垢材を手に取ってみてください。
その重み、硬さ、そして削り終えた後の手触りの虜になるはずです。
それぞれの木が持つ「性格」と対話しながら、あなただけの逸品を作り上げていきましょう。
蒲鉾の板であろうが、贈答品の木箱であろうが、たとえ割り箸や楊枝であっても創意工夫で「木工材料」になりうるものだとも思います。
そんなことを色々と経験しているうちに、きっと自分にとって「適材」との出会いがあることでしょう。
相性の良い「材料」だけではなく、相性の良い「人」との出会いもあるといいですね。
爺の工房では、今日も木たちの賑やかな声が聞こえています。
皆さんの木工ライフが、より豊かなものになりますように。
Let’s try!
本日の一言 003 「木に竹をつぐ」
「木に竹をつぐ」
これは性質の違うものを無理やり繋ぎ合わせることを指す言葉です。
不調和なもの、筋道が合わないものを無理に繋ぎ合わせても噛み合わないことの例えです。
長いこと生きてきた爺ですが、これまでの人生で人間関係や考え方の違いや仕組み・制度などの不調和などを見ることが多々ありました。
太く時間をかけて育つ「木」と一晩で一気に育つ「竹」では違うのが当たり前です。
そのようなことを避け、大らかに、朗らかに、生きていきましょう!
皆さんが良い「材料」と「人」に恵まれますように!


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