はじめに
前記事では手作業による「サンドペーパーがけ」について解説しました。
ペーパーがけは実に地味な作業で、時間もかかります。
ですから、機械化・省力化を目指すのであれば、この部分に目をつけるのも、まんざら間違いとは言えないと思います。
今回は「電動サンディング」について解説をします。
「やっと形になった!」
木工で材料を加工し終わった瞬間、誰もが達成感に包まれます。
しかし、そこからが本当の勝負の始まりであることを、ベテランの木工家たちは知っています。
そう、「サンディング(ペーパーがけ)」です。
最初に重要なことを書いておきます。
サンディングは部品加工の後組み立ての前にすることが、大原則です。
できることなら、塗装も組み立て前にできるのが理想ではあります。
さて、サンディングは一見、地味で退屈な作業に見えるかもしれません。
しかし、サンディングを制する者は、木工を制します。
仕上がりの手触り、塗料のノリ具合、そして経年変化の美しさ……。
すべてはこの「磨き」の工程で決まるのです。
今回は、初心者の方が陥りがちな失敗を防ぐ注意点から、効率を劇的に上げる電動サンダーの使い方、そしてプロ級の仕上がりを実現するコツまで、徹底的に解説します。
※ サンドペーパー(紙やすり)の基本については過去記事:「サンドペーパー(紙やすり)の基本」:を一読ください。
なぜ「サンディング」がそれほどまでに重要なのか?
「どうせ塗装をするのだから、そこまで丁寧に磨かなくてもいいだろう。」
もしあなたがそう思っているなら、それは大きな間違いです。
塗料は「傷」を隠しません。
むしろ「強調」するのです。
木の表面は、の鋸(のこ)跡や、カンナがけの不備、逆目、サンディング不調によるなど、目に見えない小さな凹凸があります。
これらを放置したまま塗装をすると、塗料がその僅かな溝に深く入り込み、「磨き残しの傷」が浮き上がってしまいます。
塗装後に「あぁ、ここに傷があったのか」と気づいても、もう「後の祭り」なのです。
手触りという「感動」。
木工で最大の魅力は、天然素材ならではの温かみある手触りです。
惚れぼれするような滑らかな表面は、適切な番手(#)のサンドペーパーを段階的に踏むことでしか得られないものです。
※ 鉄則:番手を飛ばしてはいけない!
電動サンダーの種類と、賢い使い分け
手作業でのサンディングは、小さな作品や、時間制限がないのなら良いものですが、家具などの大物になると限界があります。
そこで登場するのが「電動サンダー」です。
しかし、種類が多くてどれを選べばいいか迷ってしまうかもしれませんね。
それぞれの特徴と最適なシーンを整理しておきます。
① オービタルサンダー(長方形の底面)

最も一般的で、最初に手にするべき一台です。
爺も最初の一台はこれでした。
今では、サンドペーパー1/3の大きさに対応する大きさのものが3台、小ぶりで片手でも使用可能なサンドペーパー1/6の大きさに対応するものが2台と工房での主戦級の電動サンダーです。
• 特徴: 底面が細かく振動(偏芯運動)します。市販の紙やすりをカットして使えるため、ランニングコストが低いです。
• 得意なこと: 平面の仕上げ磨き。(小ぶりなものは曲面でも使えます)
• 弱点: 研磨力がそれほど強くないため、大きな段差を削るのには向きません。
② ランダムオービタルサンダー(円形の底面)
プロや上級者が利用する、非常にバランスの取れたサンダーです。
• 特徴: 振動に加え、回転(ローテーション)が加わります。
• 得意なこと: 研磨力が強く、かつ磨き跡(渦巻き状の傷)が残りにくい。広範囲を素早く、きれいに仕上げたい時に最適です。
• 注意点: 専用の円形ペーパーが必要になります。
③ ベルトサンダー(エンドレスサンドペーパーを使う(キャタピラ)のような構造)

「削る」ことに特化したパワーマシンです。
爺の工房でも2台あります。
• 特徴: 研磨ベルトが高速で一方向に回転します。
• 得意なこと: 荒材を平らにする、厚みを削る、古い塗膜を剥がす。
• 注意点: 非常にパワーが強いため、一箇所に留まるとあっという間に凹んでしまいます。仕上げ用ではなく、あくまで「形を整える」ための道具です。
④ デルタサンダー(三角形の底面)

痒いところに手が届く」サブマシンです。
• 特徴: アイロンのような三角形の先端を持っています。
• 得意なこと: 家具の内側隅っこ、椅子の脚の付け根など、四角いサンダーが入らない場所 の研磨に向いています。
• 特殊用途以外では不必要かもしれません。
⑤ スピンドルサンダー

• 特徴: 円筒状のサンダーが上下に動きながら一方向に回転します。
• 得意なこと: 曲線状の仕上げに向いています。円筒状サンダーの直径が色々あるので、整形や粗い番手の仕上げに向いています。
注意点:常に部品を動かし続けないと凹んでしまいます。仕上げ用ではなく、あくまで「形を整える」ための道具です。
⑥複合型サンダー・他
• 特徴: 円盤状のサンダーやベルトサンダーなどの複合型が多い組み合わせです。
• 得意なこと:小さな部品などの整形や粗い番手の仕上げに向いています。
プロの仕上がりに近づくための「5つのコツ」
道具を揃えただけでは、プロのような仕上がりにはなりません。
以下のテクニックを意識してみてください。
① 広い面の場合は「鉛筆やシャープペンシルの線」で磨き残しを防ぐ
磨く前の木面に、柔らかめ(2B以上)の鉛筆で薄くジグザグなどの線を書きます。
サンディングを行い、鉛筆線が完全に消えたら「その番手の作業は完了」という目安です。
これにより、磨きすぎや磨き忘れを確実に防げます。
(この工程は慣れれば不要です)
② 常に「木目に沿って」動かす
ランダムサンダーを除き、手作業やオービタルサンダーの場合、できるだけ木目と平行にサンダーを動かしてしてください。
木目を横切るように磨くと、深い横傷が残り、塗装した時に非常に目立ちます。
ただし、本当に荒れた面をちゃんとした鉋がけもせずに仕上げるつもりなら、最初に#80以下の番手で木目と直角方向(横擦り(よこずり)といいます)にサンディングする手もあります。
その時でも横擦りが終わったら、同じ番手で木目に沿って(平行に)サンダーを動かし、その番手を終えてください。
③ 「電動サンダー自身の重さ」だけで十分
「早く仕上げたい」と思ってサンダーを強く押し付けていませんか?
これは逆効果です。
モーターに負担がかかるだけでなく、ペーパーが目詰まりしやすくなり、仕上がりもムラになります。
サンダー自身の重みを利用しながら、軽く手を添えて滑らせるのが正解です。
④ 掃除機との連動を怠らない
サンディングで最も厄介なのが「粉塵」です。
集塵機能付きのサンダーを使うか、可能であれば集塵機(掃除機)と接続しましょう。
ブロアーで吹き飛ばすことができるのであれば、それも一手です。
粉塵が排出されないと、ペーパーと木の間に粉が溜まり、研磨力が落ちるだけでなく、深い傷の原因にもなります。
⑤ 「端」を丸めてしまうことに注意(これは本当に大切です。)
平面を磨いている際、サンダーが端から飛び出すと、勢い余って角を丸めてしまいがちです。
シャープな角を残したい場合は、サンダーを端ギリギリで止め、エッジ部分は最後に手作業で軽く整えるのがコツです。
安全と健康を守るために
電動サンディングは、健康へのリスクがある工程です。
• 防塵マスクの着用: 木の微細な粉塵は肺の奥深くまで入り込みます。必ずマスクを着用してください。
• 耳栓(イヤーマフ): 電動サンダーの騒音は意外とストレスになります。長時間の作業では、聴覚を守るためにも耳栓の使用をおすすめします。
• 火災に注意:サンディング粉は大量に溜まると危険です。こまめに掃除しましょう。
まとめ:磨きの先にある「至福の瞬間」
今回はサンディングでも電動サンダーに絞って書いてみました。
「手作業」でのペーパーがけは過去記事:
「仕上がりの極意は「磨き」にあり 手作業でのサンドペーパーがけの極意 :
をご覧ください。
電動工具とは少し違うコツや考え方があるからです。
サンディングは、確かに時間もかかるし、身体も疲れます。
部品によっては加工時間よりもサンディング時間の方が長いこともあります。
粉まみれになるし、音も結構うるさいものです。
しかし、#400以上まで磨き上げた木面に、初めてオイルを垂らした瞬間を想像してみてください。
乾いた木肌が、一瞬にして深い艶を帯びる。
指先で触れた時、まるでシルクのような滑らかさを感じる。
その感動は、丁寧にサンディングに向き合った人にしか味わえない特権です。
次に何かを作る時は、ぜひ「加工」や「組み立て」と同じくらいの情熱を「磨き」に注いでみてください。
あなたの作品は、間違いなく「既製品を超える一品」へと進化するはずです。
さあ、あなたの作業台のサンダーに、新しいペーパーをセットしましょう。
素晴らしい木工ライフを!
Let’s try!
本日の一本
「ベストキッド」
この映画はシリーズものとなり、2,3,4,リメイク版,レジェンズ…
と、続編が作られました。
磨き上げるという言葉から連想される映画ですが、今回は木工品ではなく、車の磨きです。
車のワックスがけ(WAX on)ワックスふき(WAX off) という有名なセリフと動作が、武術の基本動作になるシーンが出てきます。
何であれ、「磨く」「研磨」「仕上げ」というのはとても大切であるとの教訓ですね。(こじつけが酷い(笑))
ストーリーも分かりやすく、期待通りの展開で、安心して見ていられます。
まだご覧になっていない方は、肩のチカラを抜いて鑑賞ください。
「ベストキッド」1984年版 紹介
原 題:The Moment of Truth / The Karate Kid
邦 題:ベストキッド
配 給:コロンビア ピクチャーズ
公 開:アメリカ:1984年6月22日 日本:1985年2月16日
主な俳優:ラルフ・マッチオ、ノリユキ・パット・モリタ、エリザベス・シュー、
ウイリアム・ザブカ、マーティン・コーブ、ロン・トーマス


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