はじめに 木工の原点に立ち返る
前回は「木のまな板」についての記事をお届けしました。
その時にハッと気づいたのですが、2年以上も木工の基礎を書き続けてきたのに、木工の基本中の基本である「一枚の板を作る」手作業については言及していませんでした。
片手落ちの見本のような展開で、反省をしながらも今回は「手道具」だけを使い「一枚の板を作る」方法の解説をしたいと思います。
木工において「一枚の板を作る」という工程は、非常に基礎的な作業です。
しかし、それを手道具だけで行うとなると、皆さんの想像以上に大変で、手間暇がかかるものなのです。
ですが、趣味や娯楽として木工に向き合うのであれば、その「時間や手間がかかること自体」を存分に楽しめるはずです。
これまでに当ブログで紹介してきた、定規・鉋(かんな)・け引・治具などを使いながら「一枚の板を作る」作業を楽しんでみましょう
※ 参考記事
・定規:https://sawarabi.blog/jyougi/
・鉋:https://sawarabi.blog/kannna/
・け引き:https://sawarabi.blog/kebiki/
・墨壺・チョークライン・白書きについて:https://sawarabi.blog/sumi/
基準面という考え方

基準面図(図-1)
製材されただけの材木は製材面に鋸あとがあり、当然のことながら寸法も整っていません。
単純な構造の四角形の「まな板」でさえ、平面・厚み・幅・長さ・隣接するそれぞれの面の角度・表面仕上げなどを整える必要があります。
そこで、接する角度がすべて90度である直方体の板の整え方ですが、木工の世界では基準面(第1基準面)を作ることから始まります。
上図をご覧ください。
これは「板」の基準面を図示したものです。
「一枚の板を作る」スタートは「第1基準面」を作ることから始まります。
「第1基準面」は全ての面の基準となるので、これがしっかりと加工されていないと、絶対に正しい「板」は仕上がりません。
全ての基準になる作業だという意識が必要です。
それでは順を追って具体的な方法について解説を始めます。
一枚の板を作る
1. 第1基準面を決める (基準面図a面)
原則として第1基準面は板の一番幅広面ですので、二つに一つの選択となりますが、
木工の基本とすれば、「板は仕上がった時に裏になる方から削る」という大原則があり
ます。
ですから板は基本的に「木裏側」が「第1基準面」とすべきです。
2. 加工材を固定する
加工材が動いては作業になりません。
そこで作業台に固定することが必要になってきます。
固定と言っても、微動だにしないという頑固な固定では無く、鉋がけをする際に邪魔にならず加工材が動かないということです。
一般的に板は木表側に凹むのが通例です。
そこで「1. 第1基準面を決める」で説明したように、木裏側を上にして作業台に置くと、安定し易いという利点もあります。
作業中に加工板が動かないようにするために、ねじれ・反りが大きい時は「クサビ」
なども使い、固定するといいでしょう。
ただし、注意点とすれば加工材の持っている自然な姿のままでの固定です。
無理やりクランプなどで作業台に固定すれば、作業台の平面に影響され、加工材元来のねじれ・反りを矯正する作業ではなくなってしまいます。
3. ねじれ・反り・凹凸のチェック

ねじれ・反り・凹凸のチェック(図-2)
次にねじれ・反り・凹凸をチェックします。
自然に置いた状態で定規を当て、「どこが」「どの程度」高いのかを調べます。
図-2はチェックする時に定規を当てる方向を表しています。
緑色の線はねじれを見る時に定規を当てる場所です。
青色の線は板の幅方向の反りや凹凸を調べる時に定規を当てる方向を示しています。
3本しか表示していませんが、実際はもっと何箇所も定規を当ててみてください。
赤色の線は板の長さ方向の反りや凹凸を調べる時に定規を当てる方向を示しています。
これも3本しか表示してありませんが、実際はもっとこまめにアチラコチラに定規を当ててみてください。
いずれも、定規を当ててみて、高いところは板と定規に隙間がなく、隙間の出来る低いところまで削る必要があります。

印付け(図-3)
そして、定規に当たる高い部分を鉛筆などで印を付けます。
図-3は見やすいようにチョークで高いところに印を付けたものです。
テーブル天板のような大きな板での作業については、過去の「電気カンナ」の解説記事の中で扱っています。
基本的には大・小どんな板でも理屈は同じですので、参考にしてください。
「幅広板の平面を出す」:https://sawarabi.blog/dkanna/#toc4
手作業でも機械作業でも基本は同じなのだと、理解してもらえると思います。
- チェックした部分を鉋で削る

鉋削り(図-4)
図-4は前工程で印付した場所を実際に削り始めた画像です。
削り面がまだ途中ですので、ここで3. ねじれ・反り・凹凸のチェックの工程に戻り、改めてチェックを行い、第1基準面が仕上がるまで、3.⇄4.の工程を何度も繰り返します。
印が「鉋がけ」で消えたところでまた最初3.に戻り、定規を当て、「どこが」「どの程度」高いのかを確認します。
この作業を何度も繰り返すと、どこにどの様に定規を当てても隙間が出来なくなります。
その状態が「第1基準面」の平面が出た状態です。
このようにして、第1基準面をしっかりと仕上げます。
どの面の加工も大切ではありますが、特にこの第1基準面は全ての面の基準となるもので、文字通り一番重要な意味を持つ作業となります。
時間をかけ、しっかりと納得のいくまで「平面」にこだわり仕上げましょう。 -

け引き線入れ(図-5)
第1基準面が決まれば、いよいよ その反対側になる第3面の加工を行います。
この作業で板の厚みが決まります。
第1基準面がしっかりと平面が出ているはずなので、「け引き」を使い板全体に厚みの「け引き線」をいれていきます。
最初の基準面図(図-1)のうち、第2基準面(b面)・第4面(d面)・木口面(e・f面)に第1基準面から全てに仕上がり厚み寸法の「け引き線」をいれていきます。
図-5は、その作業を示したものです。
これにより、どこから見ても仕上がり厚みがわかるようになります。
第3面全体がその「け引き線」になるように鉋をかけて、板の厚みを整えます。6. 第 2基準面・第4面の加工について (基準面図b面・d面)
基準面図(図-1)の第 2基準面・第4面、木端側の加工になります。
板の厚みが決まり、いよいよ幅決めの作業になります。
加工順が3番目と4番目なのに「第 2基準面・第4面」と表記するのには訳があります。
木工のプロは手作業で板を作りません。
「時は金なり」という諺があるように、時間はお金(工賃)になります。
大工さん・建具屋さん・木工家etc. 木偏のつく職業のプロたちのほとんどは、手押し鉋盤や自動鉋盤で「板」や「桟」を作ります。
「8. 第1と第2だけ基準面とした理由」で後述しますが、そのような加工だと、第1基準面→第2基準面…という加工順になるのです。
手作業でもその順番でも構いませんが、もし爺が手道具だけで板を作るのであれば、今回説明しているこの方法で板を作ります。7. 第5面・第6準面 (基準面図 木口面 e面・f面)
今回のように「一枚の板を作る」場合では、板の長さを決め、仕上げる作業となります。
木口面の造作は、鉋がけやペーパーがけでも他の面とは異なります。
今回は「直方体」の板ですので、全ての隣り合う面は直角で、板の長さ方向も直角です。
手作業での場合は
(1) 「直角定規」と「白書き」で仕上がり寸法の「墨線」を入る。
(2)ほんの少し大きめに「鋸」で切り落とす。
(3)墨線まで「鉋」(できれば一枚刃の鉋)をいれる。
機械作業の場合は
(1)「丸鋸」や「横切り」などを使い寸法で切り落とす。
(2)必要に応じて「鉋」や「ペーパー」で仕上げる。
といったことになると思います。8. 第1と第2だけ基準面とする理由

基準面の印 図-6
今回は手道具を使った「板作り」を説明しているので、機械加工で「一枚の板を作る」方法とは少し異なります。
先述の通りプロの方々は、まず「手押し鉋盤」で「第1基準面」を作ります。
手道具での作業と比べると、ほとんど一瞬で「第1基準面」が出来上がります。
次に、「第1基準面」と隣り合う「第2基準面」をやはり手「手押し鉋盤」の「案内定規」に「第1基準面」を押し当て材を送る方法で「第2基準面」を作ります。
あとは、その「第1基準面」と「第2基準面」のそれぞれ裏側にあたる「第3面」と「第4面」を「自動鉋盤」に通して規定寸法に仕上げるということになります。
つまり、「第1基準面」と隣り合う「第2基準面」が文字通り厚みや幅決めの基準面
となる訳です。
そのような理由から、第1と第2だけ基準面と呼ぶことになっています。
そこで、誰が見ても分かるように、図-6のように、基準面の印を1、2の区別も分かるように付けるものです。(今回は分かりやすくするためにチョークで書いています)
爺の場合は図-6のように付けますが、独自の印でマーキングをなさる方もおられます。
個性が垣間見られるようで、面白いですね。結びに
今回は「手作業」により「一枚の板を作る」方法の説明をしてみました。
手道具だけでは膨大な時間のかかることや、技術的にも簡単では無いことを知っていただけたと思います。
「一枚の板を作る」ことは木工の基礎中の基礎ですが、どんな複雑で立派な家具や木工品であっても、こんな基礎技術の集積でしかありません。
確かに手道具だけでの木工は、気の遠くなるような時間のかかるものですが、趣味と実益の為でしたら、その過程を楽しめるものだと思います。
木工のプロがアマチュアに絶対勝てないのは、その部分に尽きると思います。
※ 過去記事
「木工を始めよう! まず..道具箱を作ろう(3)」:https://sawarabi.blog/dougubako3/
の最後に「本日の1冊」として「怪盗ジバコ」を紹介しています。
よかったら読んでみてください。
爺の思いを感じていただければ嬉しいです。
Let’s try!
本日の1冊 003
書 名 :自然散策が楽しくなる!葉っぱ・花・樹皮で見わける樹木図鑑
著 者 :山田 隆彦(監修)
出 版 社 :池田書店
何十年も木工の仕事に携わっている爺ですが、山や公園を散策していて生木の樹種名が分かるものはそんなに多くありません。
単純に勉強不足がその原因なのでしょうが、木工家にとって木材との付き合いは、ほとんどが製材後の「板」であるからです。
もちろん、爺にとって馴染みの深い材木であれば、立ち木の状態でも樹種名はほとんど分かりますが、樹木全体からすればほんの僅かなものだと思います。
今回紹介する「樹木図鑑」(正式には:自然散策が楽しくなる!葉っぱ・花・樹皮で見わける樹木図鑑 です)は、「葉」の形からほとんどの場合、4つのステップで、全く手掛かりのない樹木の名前を知ることができます。
爺はこれまで何冊かの「樹木」関連本を手に入れてきましたが、ここまで短時間で樹種名を知ることが出来る図鑑には出会えませんでした。
今の時代だとスマホのアプリで瞬時に分かるものがあるのかもしれませんね。
「アナログ生成AI方式樹種図鑑」と命名したいくらいです。
解説の内容にも満足しています。
樹木に興味を持つ人は1冊持っているといいと思います。
小ぶりの書籍ですので、散策や旅行のお供にもオススメします。
それではまた。


コメント